防爆仕様のAGV/AMRについて
化学薬品、塗料、粉体、リチウムイオン電池の製造工程など、可燃性ガスや粉じんが発生する「危険場所(防爆エリア)」でも、人手不足を背景に、搬送の自動化のニーズが高まっています。しかし、通常のAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)は、電気機器であるため、そのままでは防爆エリアで使用できません。防爆エリアへの導入には、防爆仕様のAGV/AMRが必要になります。この記事では、防爆エリアの搬送の自動化が難しい理由、防爆仕様のAGV/AMRの規格と技術的な課題、AGVとAMRの違いと選び方を解説します。
なぜ防爆エリアの搬送自動化は難しいのか?
防爆エリアでは、可燃性のガスや粉じんが、空気中に存在する可能性があるため、電気機器の使用に、厳しい制限が設けられています。工場の自動化が進むなかでも、防爆エリアは、通常のAGVやAMRを導入できず、人手による搬送が残りやすい領域です。難しさの理由は、機器が着火源になるリスクと、法規制への対応の2点にあります。
引火・爆発の3要素と搬送機器のリスク
爆発は、「可燃性物質」「酸素」「着火源」の3つの要素が揃うと発生します。防爆エリアでは、可燃性物質と酸素が存在する可能性があるため、着火源となるものを、機器から排除することが、安全対策の基本です。稼働中のAGVやAMRは、モーターの火花、基板やリレーの接点、バッテリーのショートや発熱、タイヤの静電気など、多数の着火源を抱えた、動く電気機器です。人が操作する機器と異なり、無人で走行するため、異常が発生したときに、すぐに止められない場合もあります。
厳格な法規制のクリア
日本国内では、労働安全衛生法に基づく規制があり、防爆構造の電気機械器具は、国の登録型式検定機関(TIISなど)による検定に合格したものなど、定められた基準を満たす必要があります。国際整合の防爆指針に基づく認証が認められる場合もあり、どの基準を満たすべきかは、対象の機器や設置する場所によって異なるため、確認が必要です。検定や認証の取得には、時間と費用がかかるため、防爆仕様のAGV/AMRは、市場に出ている製品が少なく、選べる機種が限られているのが現状です。
防爆仕様AGV/AMRの規格と技術的ハードル
防爆仕様のAGV/AMRを選ぶ際には、設置する場所の危険の程度と、機器の防爆の構造や性能が、合っているかを確認する必要があります。防爆の規格には、危険場所の分類と、機器の防爆構造の種類があり、それぞれ複数の区分に分かれています。自社のエリアの分類を把握したうえで、機器の構造と、技術的な課題を理解しておくことが、選定の前提です。
自社エリアの「危険場所の分類(ゾーン)」を把握する
対象のエリアが、どのゾーンに該当するかによって、機器に求められる防爆のレベルが変わります。まず、自社の危険場所がどのゾーンに分類されるかを、把握することが出発点です。可燃性ガスの場合は、次のような分類があります。また、可燃性の粉じんが発生する場所では、粉じん防爆の分類(Zone 21、Zone 22など)が適用され、化学品や粉体を扱う工程では、粉じん防爆への対応が必要なケースもあります。ゾーンの判定は、取り扱う物質や設備の状況によって異なるため、専門家の確認が必要です。
- 第一類危険箇所(Zone 1):通常の状態で、可燃性ガスが滞留する可能性がある場所
- 第二類危険箇所(Zone 2):異常時にのみ、可燃性ガスが存在する可能性がある場所
AGV/AMRに用いられる主な「防爆構造」
防爆構造には、複数の種類があり、機器の用途や、危険場所の分類に応じて使い分けられます。AGVやAMRでは、次のような構造が、単独または組み合わせて用いられます。内部で爆発が起きても外に火炎を逃さない「耐圧防爆構造」、火花や熱が着火点に達しないよう、電流や電圧を制限する「本質安全防爆構造」、内部にクリーンな空気を送り、圧力を高めて危険ガスの侵入を防ぐ「内圧防爆構造」などがあります。部品ごとに、適した防爆構造が異なるため、機器全体の防爆の設計は、複雑になります。
防爆化における主な技術的ハードル
防爆仕様のAGV/AMRでは、いくつかの技術的な課題があります。一つは、リチウムイオンバッテリーなどの、大容量の電源を、安全に保護することです。障害物検知のセンサーや、自己位置の推定に使うLiDAR、カメラといった、精密な光学・電子部品を、防爆容器に収めながら、正常な検知機能を維持させることも、難しい点です。容器の素材や窓の部分によって、センサーの検知の性能が低下する場合があり、安全性と機能の両立が、設計上の課題になります。
防爆対応における「AGV」と「AMR」の違いと選び方
防爆エリアで搬送を自動化する場合、AGVとAMRのどちらを選ぶかは、搬送のルートの変更の有無や、必要な機能によって変わります。防爆の観点では、機器の構成の複雑さが違うため、防爆化のしやすさや、選べる製品の数にも、差があります。搬送ルートが固定されているか、レイアウトの変更が多いかによって、向いている機器が異なるため、現場の状況を整理したうえで、選ぶ必要があります。
防爆仕様におけるAGV(無人搬送車)の優位性
AGVは、磁気テープなどのガイドラインを追従して走行するため、機器の構成が、比較的シンプルです。必要なセンサー類がAMRより少なく、防爆構造を組み込みやすいため、国内でも、Zone 1やZone 2に対応した製品が、一部の事業者から提供されています。搬送のルートが固定されている現場では、まず検討する選択肢になります。ただし、ルートを変更する場合は、ガイドラインの敷設し直しが必要になり、レイアウトの変更が多い現場では、手間がかかる場合があります。
防爆仕様におけるAMR(自律走行搬送ロボット)の現状
AMRは、周囲の環境をリアルタイムでスキャンする、高度なLiDARや、高性能なコンピューターを搭載しているため、防爆化の難度が高い機器です。特に、耐圧防爆容器のガラス越しでは、LiDARの性能が低下する場合があり、防爆化のハードルになっています。海外製を中心に、Zone 2に対応した製品が出始めていますが、選択肢はまだ少なく、費用も高めです。
まとめ|防爆エリアの搬送自動化は、危険場所の分類と機器の仕様の確認から
防爆エリアの搬送を自動化するには、爆発の3要素のうち、着火源となる機器の対策と、法規制への対応が欠かせません。自社の危険場所がどのゾーンに該当するかを把握し、対応する防爆構造の機器を選ぶ必要があります。AGVは、構成が比較的シンプルで、ルートが固定された現場に向く一方、AMRは、柔軟なレイアウトに対応できる反面、防爆化の難度が高く、選択肢が限られています。現場のルートの条件、危険場所の区分、必要な機能を整理したうえで、防爆の認証の内容を確認し、専門のメーカーや専門家に相談しながら、導入を進めることが重要です。
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岡谷システム株式会社

引用元:岡谷システム公式HP
(https://www.okaya-system.co.jp/)
製造業の課題解決に尽力する岡谷鋼機株式会社のグループ会社として、「工場内搬送自動化」の提案からシステム構築までを請け負う岡谷システム株式会社。
グループ会社の知見を活かし、搬送自動化に関わる機器の販売から工場導線に合わせたシステム開発までを一貫して提案しています。工場の導線に合わせた機器の選定・システム構築を通して、企業の業務効率化・省人化に貢献しています。
